目次
■「シニアはスマホを使えない」はもう古い?
2020年のシニアは92.9%がモバイル端末所持者、うち77.0%がスマホ利用者
「シニア世代はスマートフォンを使えない」。新型コロナウイルスの感染予防のため生活のあらゆる場面がオンライン化するなか、そんな言葉をよく耳にします。特にオンライン帰省が話題になったお盆休みの前後では、高齢の両親や祖父母のもとにテレビ通話対応環境がない、という声があがっていました。一方で、オンライン帰省を実施できた人からは「思った以上に盛り上がった」や「帰省する時間や費用を節約できた」という肯定的な意見もあり、シニアのスマートフォン利用実態やデジタル格差を考えさせられる出来事になったのではないでしょうか。
実は現在、コロナ禍においてシニアとスマートフォンの状況は大きく変化してきているのです。MMD研究所では2012年から継続しているシニア調査の最新版として、「2020年シニアのスマートフォン・フィーチャーフォンの利用に関する調査」を実施しました。シニアのスマートフォン利用実態はもちろん、新型コロナウイルスによる影響も考慮した最新の調査データになります。今回のブログでは、この2020年におけるシニアのスマートフォン利用について一部データを抜粋してご紹介します。
まず、どのくらいのシニアがスマートフォンを所持しているのでしょうか。
60歳~79歳の男女10,000人を対象に、モバイル端末の所有について聞いたところ、モバイル端末の所有率は92.9%。メインで利用しているモバイル端末の内訳は、スマートフォンが77.0%、フィーチャーフォンが17.3%となりました。
2019年の調査から8.5ポイント増加。調査を開始した2012年と比べると64.3ポイント増加と、シニアのモバイル端末の所有が変化していることがわかります。
次世代通信システム「5G」に対応することから大手キャリアは3G回線のサービス終了を発表し、2022年から徐々に3G回線が使用できなくなります。
そのため、フィーチャーフォンユーザーにとっては乗り換えを考え始めるタイミングだったのでしょう。そこへ新型コロナウイルス流行にともなう情報収集や家族との連絡といった需要が重なり、スマートフォン普及が加速したと考えられます。
■シニアの22.1%、緊急事態宣言発令後に「モバイル端末の利用時間が増えた」
新型コロナウイルスの流行は、シニアのモバイル端末の利用時間にも影響を及ぼしています。下のグラフを見ると、シニアの22.1%が緊急事態宣言発令後にモバイル端末の利用時間が増えたと答えました。
端末別でみると、フィーチャーフォンやガラホ利用者よりもスマートフォン利用者の端末利用時間が延びていることがわかります。
新型コロナウイルスの拡大が懸念される中、外出を控えているという方も少なくないはずです。重症化のリスクが高いとされているシニアは自粛意識が高く、自宅での過ごし方のひとつとしてスマホを活用するようになったのではないかと思います。
■ステイホーム期間には、家族・友人とのコミュニケーションでスマホが活躍
では、具体的にシニアはどのようにスマートフォンを活用しているのでしょうか。外出自粛期間中にスマートフォンで新しく始めたこと・頻度が増えた行動を聞くと、オンラインショッピングや家族・友人との音声通話、ゲームが上位にきました。
筆者自身、オンライン帰省をするためにシニア世代の両親にアプリの操作方法を教えたところ、スムーズにビデオ通話を行うことができました。数日後には母から、「これなら私ひとりでも上手くできそう。今度は友人と試してみる」という連絡を受けました。
ステイホームをきっかけに、シニアのスマートフォン機能への関心度や知識は高まっているのかもしれませんね。
■平常時からコミュニケーション、地図、インターネットや写真などシニアの生活を豊かにするスマホ
コロナ禍という特殊な状況下であることを除いても、85.4%のシニアがスマートフォンになんらかのメリットを感じています。上位5位にふたつコミュニケーションに関する項目が入っており、やはりシニアにとってスマートフォンを用いた手軽な連絡手段は魅力になっていることが読み取れますね。
地図など生活に役立つ機能が多いのはもちろん、写真や動画といった娯楽を気軽に楽しめることもシニアの生活を豊かにする要素のひとつかもしれませんね。
■シニアのスマホ利用のきっかけは家族にアリ?
これまでシニアのスマートフォン利用実態についてデータで見てきましたが、そもそもどういったきっかけでシニアはスマートフォン利用に至るのでしょうか。下のグラフを見ると、これまでの傾向と同様にコミュニケーションツールに関する需要が高い一方、「家族にすすめられたから」という回答も目立ちます。
スマートフォンはシニアにとって新しい印象が強いもの。ひとりで決断するよりは家族の後押しがあったほうが利用に踏み切りやすいのかもしれません。また、家族としても自分たちと同様にスマートフォンを利用してくれているほうが生活をサポートしやすく、安心感が増すのではないでしょうか。LINEのスタンプで60代の祖父とやりとりをしている筆者の知人からは「日常に溶け込んだツールでやりとりが出来るため自然と連絡頻度があがる」といった声もありました。スマートフォンの多機能を使いこなせれば理想的ですが、まずは家族と同じ機種のスマートフォンやアプリを利用してみるだけでもメリットがあると思います。
■まとめ ― 急速に進むシニアへのスマホ普及。次の段階は?
3G回線の終了、新型コロナウイルスの流行といった出来事がシニアにスマートフォンを普及させるきっかけになりつつあります。今後は、人生100年時代を生きるシニアの生活の質をスマートフォンが向上させることに期待が高まるのではないでしょうか。同時に、シニアがスマートフォンを有効活用するためには何が必要か?という点も課題になっていきそうですね。それに応えるため、すでに各通信キャリアはスマホ教室などシニアが気軽にスマートフォンを学べる機会を提供しています。家族間のレッスンは心的障害を取り除くうえで効果的ですが、より分かりやすさや効率を求める場合にはスマホ教室も手段のひとつとなるでしょう。今後もシニアとスマートフォンの距離を縮める試みは続々登場するのではないでしょうか。
とはいえ、身近なことで考えるなら、スマートフォン利用についてシニア自身がどう思っているのかを知ることが第一歩になります。来月21日は敬老の日。祖父母・両親を交えてスマートフォン利用について話をしてみるよい機会になるかもしれません。
MMD研究所ではこれからも、シニアにまつわる調査データを引き続き発表していきます。
調査データへのお問い合わせなどございましたら、以下の連絡先までお気軽にご連絡くださいませ。
※本調査レポートは小数点以下任意の桁を四捨五入して表記しているため、積み上げ計算すると誤差がでる場合があります。
※回答者の属性は会員登録後に無料レポートよりご確認いただけます。
注意事項
※こちらの調査情報は、調査実施者であるMMD研究所との提携により掲載しております。
※本ページ内で掲載している文章、及びその内容についての無断転載等は原則として禁止しています。
※データの利用、引用可否、調査データのついてのお問い合わせはMMD研究所まで必ずご連絡ください。
■ 関連リンク
●MMD研究所(モバイルマーケティングデータ研究所)
●MMD研究所 プレスリリース
●2020年、シニアはスマホを使えないはもう古い? シニアのスマホ所有率約8割