2019年1月17日、有限責任監査法人トーマツは、広告活動を行っている上場企業105社を対象とした「広告取引に関する広告主実態調査」について発表しました。
調査により、半数以上の企業がデジタル広告の利用拡大を重要視している一方、課題に感じている部分もあり、またデジタル広告不正に対する知識および取り組みも十分ではない状況であることがわかりました。同時に、9割を超える企業が「何かしらの取り組みが必要」とマーケティング取引における透明性に課題を感じている一方で、広告・メディアの取引に関する社内ルールやガイドラインを設定している企業は半数にしか満たないことがわかりました。
主な調査結果
広告主における広告活動重視項目と課題
広告戦略上の重要項目について質問したところ、74.3%の企業が回答した「ブランド価値の向上」が最重要であることがわかりました。また50%を超える企業が、「デジタル媒体の利用拡大」および「ブランド評判の確立」を回答し、半数以上の企業が媒体のデジタル化およびブランド評判の確立に積極的であることがわかりました(図表1)。現在と比較してさらに今後重要視したい項目は、「マーケティングROI」(+29.5%)、「アナリティクス・AIの活用」(+13.4%)、「顧客経験価値の向上」(+10.5%)となりました。
各広告メディアに対する重要度では、現在、および、今後ともにデジタルメディアに対する重要度が高い一方で、デジタル広告に対する印象について質問したところ、「若年層獲得の効果が高い」(61.9%)、「費用対効果が測定しやすい」(53.3%)、動画や音声によるコミュニケーションに適している」(43.8%)と評価する一方、「媒体としての信頼性に疑問がある」(22.9%)、「メニューが複雑で理解しづらい」(20.0%)と課題も感じていると見受けられました(図表2)。
広告・メディア戦略の実行や投資に対する課題としては、82.9%の企業が「広告測定結果の難しさ・不透明さ」を、次いで51.4%の企業が「媒体単価などコスト面の不透明さ」を問題視していることがわかりました。
図表1 広告戦略上の重視項目(母集団:105、複数回答可)
図表2 デジタル広告に対する印象(母集団:105、複数回答可)
デジタル広告不正
デジタル広告不正についての認知度について調査したところ、「内容まで知っている」(34.3%)、「内容は知らないが見た・聞いたことはある」(43.8%)となり、78.1%の企業が認知していることがわかりました(図表3)。一方で、認知している企業に対して、具体的にどのような内容について知っているかを調査したところ、「不正事例」(91.5%)、「不正の仕組み」(65.9%)、「不正の原因と予防策」(57.3%)、「対応策」(50.0%)となり、不正事例を中心に認知が浸透しているものの、具体的な項目名や仕組み、予防策はいまだ知られていないことがわかりました。
図表3「デジタル広告不正」に関する認知状況(母集団:105、単一回答)
広告活動におけるガバナンス課題
広告・メディアの取引に係る社内のガイドラインやルールの存在を調査したところ、「ガイドラインがあり、準拠した運用をしている」(28.6%)、「ガイドラインはないが部門内や関係者でルールを保有」(16.2%)となり、半数以上の企業が社内ルールやガイドラインが設定されていないことがわかりました(図表4)。
図表4 広告・メディアの取引に係る社内のガイドラインやルールの有無(母集団:105、単一回答)
調査概要
本調査は、有限責任監査法人トーマツにて、広告・メディア投資における企業の実態の把握を目的として実施しました。詳細レポートでは、不正広告への取り組み内容や、マーケティング投資の透明性向上の推進者などの状況を明らかにし、広告・メディア投資における課題を分析しています。なお、本調査結果に係る割合は小数点第二位以下を四捨五入しており、合計値が100%にならないものがあります
詳細については関連リンクよりご確認ください。