【syncADインタビュー第13弾】AppsFlyer Japan大坪 直哉 x 渡辺エリナ x 近藤塁 iOS14.5アップデートとマーケティングへの影響
2022.04.28
2022.11.18
AppsFlyer Japan株式会社
世界中のトップブランド企業がAppsFlyerクラウドに信頼を寄せ、顧客プライバシーを維持しながら素晴らしい製品や顧客体験を築いています。
Web広告・マーケティングのいまをお届けするsyncAD(シンクアド)インタビュー第13弾は、現在、AppsFlyer Japanカントリーマネージャーの大坪 直哉氏、Director of Partner Developmentの渡辺エリナ氏、インタビュアーとしてマーケターの近藤塁氏と共にAppsFlyerの強み、iOS14.5のアップデートによるマーケティングへの影響などお聞きいたしました。
尚、今回はZoomによるオンラインインタビューになっております。
目次
AppsFlyerについて
AppsFlyer Japanの概要とAppsFlyerの特徴について教えてください。
2015年にAppsFlyer Japanを立ち上げました。現在のチームサイズとしては21名くらいです。
国内でのシェアはインストールの数で言うと45%もっておりNo1です。
アプリ数で言うとまだNo1ではないですがシェアは伸び続けています。
今回のiOS14.5の波をうまく捉えてビジネス規模、マーケットシェアを拡大していきたいと考えています。
AppsFlyerの強みは、圧倒的な世界シェア(72%)によって得られたビッグデータと独自AIによる”正確なアトリビューション”、メディアや代理店の資本が入っておらず”一貫して中立性を保っている”点、またアドフラウド対策にも積極的投資を続けており”世界で最も広告不正に強いMMP”といっても過言ではない点などです。
iOS14.5のリリースによって何が起きるのか
2021年4月26日のiOS14.5リリースによって何が起きるのかについて教えてください
ATT(App Tracking Transparency)というプライバシーに関するフレームワークが導入されました。
これはユーザーに対してIDFAによるトラッキングを許可するかしないかの同意を求めるもので、広告主がIDFAによるトラッキングをしたい場合は必ずアプリ内にプロンプトで表示して許諾を得る必要があります。
逆にIDFAの取得が不要な場合は必ずしもこのプロンプトを出す必要はありません。
また、このプロンプトに表示するメッセージの一部は自由に書き換える事が可能です。
ATTによる影響
IDFA取得率が下がるためアトリビューション計測に影響が出ます。
ただしAppsFlyerではIDFAの取得同意が取れなかった場合は確率論的モデルというソリューションで計測を行う事が出ます。
確率論的モデルについて教えてください
機械学習を活用してプライバシーを損なうことなく統計的に推定し、個人を特定せずに集約化された情報をポストバックします。
フィンガープリントとの違いについて良く聞かれるのですが、フィンガープリントはユーザーの同意なく、ユーザーやデバイスを特定する行為ですが、確率論的モデルではユーザーやデバイスを一意に識別できません。
SKAdNetworkの課題
これまであまり使われていなかったSKAdNetworkですがATTリリースによってメディアやMMPも対応を迫られる事になります。
※SKAdNetworkとは?
Appleが提供するプライバシーに配慮した計測手法。
iOS14.5リリース前から存在していたが、利用するメリットが少ないためあまり普及していなかった。
今回ATTがリリースによってユーザーへのIDFA取得同意が必要になり、IDFAに代わる計測手法として改めて対応するメディアが増えている。
ただし、SKAdNetworkがMMPの行ってきた計測に完全に取って代わるかというと難しいと思います。かなり制限があるので、当面はMMPによる計測とSKAdNetworkによる計測を両方走らせるといった対応になると思います。
MMPはインストールした時点でまず一回ポストバックを送り、その後アンインストールされない限りアプリ内イベントを計測し続け、その都度媒ポストバックを送りますし、また管理画面にもほぼリアルタイムで反映さます。
対してSKAdNetworkでは、まず最低でも24時間以上経たないとポストバックが行えないので広告キャンペーンの最適化が非常にやりにくいです。
どういうことかと言うと、Appleの仕様でコンバージョンバリューという、どういうアプリ内イベントがあったかを表現する6bitの値があるのですが、これに複雑なタイマーの設定があるためポストバックが最短でも24時間、条件設定次第では最長64日かかってしまうのです。
AppsFlyerのSKAdNetwork計測のソリューション
AppsFlyerでは広告主・マーケターのためにSKAdNetwork用のソリューションをいくつか用意して一つのパッケージにしています。
・コンバージョンバリューの設定
コンバージョンバリューの設定は広告主でも行えるのですが、6bitの2進数による0-63の値の設定なので手元での管理が煩雑で困難です。
AppsFlyerではこれをサポートする機能を用意しています。
収益、コンバージョン、エンゲージメントという3つの観点で簡単にコンバージョンバリューの作成をできるようにしています。
完全カスタムとして広告主側で設定した独自ルールの設定も可能です。
前述の通り、コンバージョンバリューは条件設定次第では最長64日でポストバックを送信しますが、AppsFlyerで設定すると1~3日でポストバックを送信します。
また、AppleにはSKAdNetworkの管理画面がないため、媒体毎にレポートを取得して集計する必要がありますが、AppsFlyerでは各媒体から受け取ったSKAdNwetworkのデータを集約し一つの管理画面上で表示する事ができます。
・不正検知について
通常のポストバックはMMPが媒体に送りますが、SKAdNetworkの場合はAppleが媒体にポストバックを送り、媒体からMMPに転送してもらうというデータフローになっています。
こうしたデータフローのため、悪意のある媒体の場合コンバージョンバリューの値を改ざんしてMMPに返すという事が可能になってしまいます。
そのため、AppsFlyerでは現在SKAdNetworkのポストバックデータを貯めて、Protect360という不正対策エンジンを活用して不正検知を行っていきます。
・効果予測
いずれにしてもSKAdNetworkでは一度しかポストバックを行えないため全てのイベント情報が計測できるわけではありません。
また、時間軸でもAppsFlyerを使った場合、初回起動後24~72時間のポストバックデータを元に最適化する事になるため、中長期的なデータでの最適化が行えません。
これを解消するため、24~72時間のポストバックデータを元にキャンペーンのスコアを予測する機能を現在開発中です。
各マーケティングプレイヤーがうける影響は?
各マーケティングプレイヤーが受ける影響について教えてください
・広告主、マーケターへの影響
ポリシー面では今後はプライバシー保護を遵守する姿勢が必要になってくると思います。
マーケティング面ではアドテクに頼らず、しっかり自社のアプリやプロダクトを好きになってもらう工夫が求められると思います。
IDFAの許諾率を見るとユーティリティアプリは高く、カジュアルゲームは低くなっているというデータがあります。
つまり、他のアプリで代替できない価値が提供出来ていれば、ユーザーも積極的に許諾しているという事が言えます。
アプリの内外でユーザーとの関係値を構築していくというマーケティング本来の活動が重要になってくると思います。
・メディア、ネットワークへの影響
IDFAを中心にしたリターゲティングを行っているメディアやネットワークは何らかの変化は求められる事になると思います。
リターゲティングという手法そのものは一定の効果があるため、IDFAに依存しないリターゲティングの手法を模索していく必要があると思います。
歴史を振り返ると、枠売りの時代から、アドテクの進化によって人をターゲティングするようになり、それが先鋭化していく中でついにはプロファイリングのようになっていきましたが、それがもう一度枠に戻っていく時代になると思います。
逆に言うとユーザー属性がはっきりしているような枠を持つメディアであればeCPMも下がらず、クリック、CVも発生し今後もしっかりとマネタイズできるかもしれません。
終わりに
最後にマーケティングプレイヤーに向けて一言メッセージをお願いします。
GDPR、CCPAの潮流の中プライバシー保護の観点は不可逆的で、これまでのプラットフォームのレギュレーションをハックするような手法から考え方を変える時だと思います。
過去にしばられるのではなくこの状況に合わせて発想していく必要があり、逆に言うとそれが出来る人が勝っていく時代なのだと思います。
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インタビュアー紹介
近藤 塁プロフィール
株式会社FULLSAIL代表取締役
一方で、大手通信キャリアグループにも社員として所属。
FULLSAILでは主にマーケティング領域のソリューションの提供とコンサルティングを行っている。
株式会社FULLSAIL:https://full-sail.jp